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昨年の夏、激しい夕立と汗に濡れて駆け込んだ晴海のハム・フェアの会場は、それでも熱心なハムの人たちであふれていた、その会場の新製品ばかり並んだ一角に、なんと Collins KWM−2 を展示しているコーナーがあるではないか。〈えーっ、 Collins が KWM−2 の再生産を開始したのだろうか〉 と、浮き足だって近くに寄ってみると、見慣れた KWM−2 のそばに、大きなスピナー・ノブの付いた、見慣れないけど見たような気もするカウンターみたいな物が並んでいる。
どうも KWM−2 の再生産ではないようだなぁー、と思いながらよく眺めると、思いも掛けないエキスターナル (外付け) VFO だった。しかも、そのパネルには、ユニークなジェネラル・カバーレッジの受信機などを登場させてよく名を知られている、 AOR のロゴ・マークが入った新製品である。
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KWM−2 やオリジナルのエキスターナル VFO の 312B−5 と一緒に置いたとしても、何の違和感も感じさせない S−Line 伝統のデザインを踏襲していて、 Collins の新製品かと間違えてしまいそうなうれしい外観だ。ドキドキしながらよく眺めると、カバーを止めているネジもミリ・サイズではあるもののステンレス製のようだし、パネルを囲むエスカッションも晩年の S−Line のプラスチック製と異なり、全盛期時代のアルミニウム合金製の手触りである。
まさに、 Collins が大好きで、隅々まで知り尽くしたエンスージアストが企み、造り上げた製品のようだ。
そのエキスターナル VFO ; DDS−2A をようやく使う機会に恵まれたので、同好の志に向けてご紹介しよう。 |
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◆外観
外観は、タイトル写真で今までの説明が一見でご理解いただけよう。パネルの右一角を大きく占めるのがメイン・チューニングのノブである。パネルの大きさに比べてアンバランスに大きすぎるが、私はむしろこのアンバランスなのが気に入っている。なにしろ目だって心地よい。このノブが取り付けられているロータリー・エンコーダーのシャフトはインチ・サイズで、 Collins のオリジナルと交換可能である。
ロータリー・エンコーダーが使われているのだから、回路は当然ディジタライズされた周波数シンセサイザー方式である。しかもキャリア対ノイズ比 (CN比) が良いとされている DDS (Direct Digital Synthesizer) である。「 Collins はやはり PTO でなくちゃ 」などという方は、もうこれから先をお読みいただかなくても結構である。
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KWM−2 |
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| ◆ Collins で聞く短波放送
さて、読み手が減ったところで、 DDS−2A の最もうれしい機能をお知らせしよう。それは、あなたの大事な KWM−2 や 75S−3B がジェネラル・カバレッジの受信機に早変わりする。 200kHz ステップで 6,550 〜 32,950MHz の第一局発の出力も併せもっていることである。ただし、オリジナルの第一局発の周波数と 5kHz だけ異なっているが、 VFO の周波数が逆方向に 5kHz ずれているため、相互補正でまったく問題ない。ちょうど CP−1 のクリスタル・パッケージの水晶発振子を全部インストールしたのと同じことになる。もっとも CP−1 を全部インストールするなど不可能だが。 もうこれで、法外な高値でわけのわからない 75S−3C や 51S−1 を、そして数が少なくなり値が上がりつつある 312B−5 などをあり金はたいて購入する必要もないわけであり、ハム交換室を覗く機会も減るだろう。
VFO チューニングに加えて 100チャンネルものメモリーが搭載されているから、ロング・レンジの航空路のチャンネルなどは、いったんメモリーに入れてしまえば、ダイヤルをぐるぐる回さなくても済むから、たいへん便利である。もちろん、メモリーの書き換えも可能だ。もっとも KWM−2/A には AM 用の検波器が装備されていないので、短波放送を聞くには一工夫が必要だが、 75S シリーズの受信機には DDS−2A は最適で、 25年以上も前の受信機が現在のどの受信機にも劣らない性能を発揮することが再確認できるだろう。
ただし、 DDS−2A が動作時は、わが KWM−2 や 75S のメイン・チューニングが動作しないので、ダイヤルの灯も消えてしまうのがたいへんに寂しいが、まぁ、それは仕方がないというものだ。 |
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◆作動させる
DDS−2A に新たに専用の 12V の外部電源を用意して、わかりやすく書いてある取り扱い説明書に従って KWM−2/A や S−Line に接続してスイッチを ON にすると、ピッという音と共に DDS−2A の表示窓が明るくなる。DDS−2A の周波数表示は少し暗い萌え黄色の液晶で、目に優しい感じなのにもかかわらず、明るい所でも読み取りは容易だ。
メイン・ノブの左にある矢印のプッシュ・ボタンの位取り選択と、メイン・ノブの組み合わせで希望する周波数を選ぶ。すると、左下に半円に並んだ LED が周波数に対応して、 KWM−2/A 、 S−Line の選択すべきバンドを ABCDE のうちから一つを表示点灯する。と同時に、第一局部発振周波数も DDS−2A から出力し、 VFO 出力と共に KWM−2/A と S−Line に送り込む。
DDS−2A 側はすべて自動的に切り替わるが、 KWM−2/A と S−Line のバンド選択と Exciter Tuning や Preselector は自らの手動となる。 Collins のノブに触れて動作のセッティングをしてやるせめてもの機会でもある。なろうことなら、本体のスピナー・ノブを回して DDS−2A をコントロールし、メイン・ダイアルの窓も明るいと、たいへんにうれしい限りなのだが。 |

75S−3B |
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◆発振部の素顔
VFO は、 A・B の二組の使用が可能で、 A および B を独立で、あるいは A・B 各々異なった周波数でいわゆるスプリットの運用などの機能を備えている。 DDS−2A の出力レベルは、実測では VFO が 2Vrms 、 HFO が 3.5Vrms と、それぞれ KWM−2 のマニュアルの Table−4 の値よりやや高めである。しかし問題となるほど高いわけではないので、あらためて調整する必要は皆無である。
実際に動作させてみると、本体の VFO と聞こえ方が違いようもないが、周波数の変化はディジタル・コントロールだから連続的とはいかない。周波数変化の位取りにもよるが、 10Hz 変化ではさほど感じられないものの、 100Hz 変化では音の変化がドレミファと断続的に変わるのがわかる。とくに CW などのキャリアーとのビートでは顕著である。当然のことだが、しかし 10Hz ステップではほとんど連続的な変化に聞こえるから、心配はご無用である。
信号に付随するノイズも本体の VFO とはやや異なった感じだが、もともと外来雑音の多い HF 帯のことだから、あまり気にすることはない。しかも、 DDS 方式の CN比 が 130dB であることを仕様でうたっているくらいだから、ノイズは申し分なく低い。 (右上へ続く)
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(左下より)
事実、筆者の古い測定器では −90dB あたりまでしか測定できず、この範囲ではまったく問題なしである。
せっかく、これだけ CN比 が良いのだから、外付けの 12V の電源はマニュアルでも特にことわっているように、リップルなどの雑音の少ない物を選んでいただきたい。 ケチして電源に安いものを使うと CN比 が 70dB チョッとしか得られず、 130dB という値が電源も含めてあらゆる点でむずかしいか、の好例である。古い Collins ではもっと悪いものとあらかじめ覚悟をお願いする。
VFO の出力の周波数変化範囲は、本体の VFO の 7
0K−2 と 5kHz ずれた 2.695 〜 2.495MHz である。しかし、 当然VFO の出力には スプリアス成分が含まれているので、出力ケーブルの途中に上記の周波数帯域だけを通過させるバンド・パス・フィルター (BPF) が挿入されている。不安定で不格好なケーブルの途中でなく、何で DDS−2A の中に組み込まなかったのか不思議である。
※編集部注 :
ケーブル途中のフィルターについてメーカーの開発者に問い合わせたところ、フィルターは DDS−2A 本体にも取り付けてあるが、さらに効果を稼ぐため、実験によりもっとも良い結果の得られた現在の位置に追加してあるとのこと。
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| ◆申し分のない周波数安定度
12.8MHz の TCXO (Temperature Compensated Crystal Oscillator ; 温度補正水晶発振器) のクロックでコントロールされた PLL の周波数別に、3グループに分かれた VCO による HFO の出力は、出力端子を測定器で眺めると数次の高調波が観測できたが、これは KWM−2/A や S−Line の同調回路で減衰してしまうので心配はいらない。現に KWM−2/A などの第一局発の水晶発振回路の高調波成分も同じようなものである。
周波数安定度は申し分なく良い。仕様によると、1分間あたりの変動率が百万分の5 (5ppm ; 14MHz で 70Hz) 以内となっているが、これは DDS−2A の各システムをコントロールするクロックである 12.8MHz の高安定度水晶発振器の安定度そのものである。測定器と標準電波との参照では、われわれが生活する室温のわずかな短期的変動では、 DDS−2A の温度上昇を考慮に入れてもこの値より一桁近く少なく、長時間の RTTY の送・受信にもまったく心配はいらない。 (右上へ続く)
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(左下より)
SSB 運用時の VFO 周波数のオフセットは、 DDS−2A の出荷時には KWM−2/A などの 1.35kHz に設定済みである。ただし、キャリア発振の BFO は KWM−2/A や S−Line 内部の水晶発振によっているので、経年変化などにより周波数がずれている場合には、必要に応じて 1Hz ステップで最大 9.999kHz までオフセット周波数を動かせる。これで満身創痍の Collins の SSB での運用にも心配はない。送信時における出力もオリジナルの状態とほとんど変わらない。むしろ、いくぶんアウトプット・パワーは増し気味である。 DDS−2A から KWM−2 への出力電圧が高いのでスプリアスの増加を心配したが、ダミー・ロードでの出力を観測した限りでは、まったく問題ない。
発振周波数が正確で周波数安定度が良いことは、まったくありがたいことで、そのためにかつての Collins の名が上がったわけでもあるのだが、 DDS−2A でコントロールすることで、あらためて KWM−2/A の良さを見直すことになった。 というのは、短波の放送にゼロ・インして音楽放送を聞いたときに、この感を深くした。それは、あたかも同期検波回路を備えているかのごとくに、綺麗に音楽が流れ始めたのだ。再度確認のために常用の Altec 604−8G のスピーカー・システムをつないでみた。 Hi−Fi とまでは言わないが、結構な音楽が流れたのである。もっとも、 KWM−2 の受信部がほかの S−Line に比べて高電源電圧で動作していて、そのダイナミック・レンジの広さにもよることは確かだ。 DDS−2A の導入で、たまには KWM−2/A をセミ・ハイファイで楽しむのも新しい発見になるだろう。たった 2.1kHz の帯域幅なのにである。このことは、たった 2.1kHz とはいえ、聴感の最も重要な帯域の忠実度を高く保つことの重要さを語っている。
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◆贅沢をいうなら
DDS−2A は、パーソナル・コンピューターによるリモート・コントロール用の RS232C の端子が設けられていて、内部の CPU にコマンドを送ることができる。しかし筆者は、まだ差し迫った要求を感じていないので試してない。したがって残念ながらこの項目についてはレポートできない。最近のトランシーバーも内部にマイクロコンピューターを装備していて、同様のリモート・コントロールが可能なのだから、オールド・タイマーの KWM−2/A も DDS−2A とのコンビネーションで up to date なトランシーバーに大変身である。
さて、これまで大変身なら、赤外線によるワイヤレスなリモート・コントロールなどいかがなものだろうか。だいたい、 Rig が占領しているデスクは狭いものである。ちょっと離れて広々としたデスク一杯にお好みの物件を広げて作業中、突然 on the air してきた珍局をいち早く見付けてトップで釣り上げる快感を味合わせて欲しいものだが、しかも KWM−2/A で、といったら贅沢だろうか。
文中でも述べたが、 VFO の出力ケーブルの途中のフィルターは DDS−2A の中に収まらないだろうか。蛙を飲んだ蛇みたいで不気味だし、邪魔で仕方がない。(編集部特注参照)
※編集部注 :
ケーブル途中のフィルターについてメーカーの開発者に問い合わせたところ、フィルターは DDS−2A 本体にも取り付けてあるが、さらに効果を稼ぐため、実験によりもっとも良い結果の得られた現在の位置に追加してあるとのこと。
(右上へ続く) |
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(左下より)
S−Line そっくりで、すごく気に入っていて、ディジタル・コントロールの D をとって 312D−5 とか 399D−1 と呼びたいくらいなのだが、ケースも Collins なみに総アルミニューム合金製だともっと気が安まるのだが、これも贅沢だろうか。
それから、 200kHz ステップの HFO が切り替わるときに、 PLL がアドレスを探して一瞬うろうろとして、チュルチュルと微かに呟くのがおもしろい。シンセサイザー方式の局発の共通の現象で、 PTO に慣れた耳には気になるかも知れないが、実害があるわけでもないし、すぐ慣れてしまうだろう。
もう一つ、せっかく BFO のオフセットを 9.9kHz まで実現しているのだから、キャリア発振の出力も周波数可変で DDS−2A から供給できると、これは、もう一言もないのだが。でも良く考えてみると、変にキャリア・ポイントをいじり過ぎて、どこかのバンドのように珍妙な音の SSB がバンド中に溢れかえっても困ってしまう気もする。
69、800円の価格設定が高いか安いか意見の分かれ目だが、とにかく便利なエキスターナル VFO で、受信あるいは交信相手が Collins を使っているのがすぐにわかる。最新式のトランシーバーの局はきちんとした周波数に出ているのに、 Collins は割り切れない半端な周波数のところにいて、ジワジワとにじり寄ってくるからだ。
使い始めて一ヶ月足らずだが、十分に楽しませてもらっていることをつけ加えておく。
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